相続税対策 ①贈与による財産移転

概算相続税額の算定をおこない、将来、相続税の納税が発生するという結果になった際相続税対策の選択肢の一つとして生前贈与がございます。

現行の贈与税の基礎控除額は110万円です。一年間にもらった財産の合計額が110万円以下であれば贈与税はかかりませんので、このしくみを考慮して贈与をおこなうと贈与金額によっては税負担ゼロで財産の移転ができるのです。一般的には金融資産について110万円以下の財産移転をおこなうケースは多いように思います。

相続人が4人いる場合などは一人100万円ずつ贈与した場合、総額で400万円(100万円×相続人の数4)の財産を無税で相続人に移転することができます。不動産の場合は財産を移転する場合、財産評価の費用や登録免許税などコストがかかりますので金融資産の贈与に比べますとこのしくみを使うケースは多くないように思います。

参考資料:国税庁 贈与税がかかる場合(暦年課税)

相続税対策のスタートは何をすべきか?

よく「相続税対策について相談したいのですが?」というご相談を受けることがあります。

金融機関の説明会や個別面談などで相続税対策をしないと大変なことになるような印象を受けてしまい、慌てて当事務所にいらっしゃるケースが多いです。

では相続税対策を検討する場合、スタートは何をすべきでしょうか?どの財産を贈与するのか?アパート経営を選択するのか?

正解は、まず現在の概算の相続税額を知ることかと思います。(これはあくまで私見になります)。概算相続税の試算をして実際に相続税が発生しない場合は、納税という観点で考えますと贈与しなくても良いという選択肢が生まれると思います。また、概算で相続税額がある程度発生するとわかった場合初めて相続税の負担を減らす方法の検討(相続税対策)が必要になると思います。

相続税が心配!!と感じているけれども、どうしたらいいんだろうとお悩みの場合は顧問税理士や近くの税理士に概算相続税の算出のご依頼をされることをお薦めいたします。

団塊世代の相続税の申告を続ける中で感じたこと

ここ数年、相続税の申告のご依頼が多く、一年を通じて複数の相続税申告書を作成しております。そこで感じたことなのですが、団塊の世代の方々は高度経済成長期にがむしゃらに働いてくださり戦後の日本経済を復興くださっただけでなく、会社を引退されたのちも、子供たちに多くの財産を残している方が多いということです。

一度リタイアしたら夫婦で楽しもうというお話はよく伺いますが、実際多くの方々は子供や配偶者といった相続人のために財産を残されていることを申告書作成の過程で拝見いたしますと、被相続人の想いが伝わってくるような気持になるときがあります。

相続税の申告は納税の義務に従って当然の手続きなのですが、相続人の皆様が生前には気づかなかった被相続人の想いにふれる機会かもしれません。

税理士として当然ですが、誠実に申告書作成に取り組まなくてはと感じます。

駐車場業の認定訴訟、納税者側勝訴!

不動産業とは事業税を課税する際の対象となる事業ですが、この度、個人がコインパーキング会社に土地を貸し付け、事業の運営には直接関与せず賃料を受け取る方式では土地を貸し付けた個人は駐車場業をおこなうものとは認められないとする判決がでました。事業税の課税について影響が出ると思われますので同様の事業をおこなっている方はご注意ください。

参考資料 個人事業税の駐車場業を巡る訴訟で高裁も納税者が勝訴、土地賃貸方式は課税対象外(税のしるべ)

     東京都が「駐車場業の認定」に関する取扱いを変更(税のしるべ)

準確定申告をする場合の資料集めについて-有価証券(特定口座年間取引報告書)など-

相続発生以後、準確定申告をする場合にも確定申告同様申告するための資料収集が必要になります。被相続人の方の確定申告の内容を相続人の方がご存じであれば申告手続きはスムーズに進みますが、全く関与されていないと資料集めも大変ご苦労されることが多いように感じます。

そうした資料集めの中でも被相続人の方が生前に有価証券や投資信託の譲渡等をされていたケースなどは時間がかかることが多いです。

例えば、被相続人の方が特定口座を設けて取引をおこない確定申告時に特定口座年間取引報告書を証券会社等から交付を受けて申告をしていたケースなどは、相続発生後になりますと、1月1日から相続発生日までの特定口座年間取引報告書の交付を証券会社にお願いしても交付されないケースが多く、その場合はそれに準ずる書類を証券会社に依頼して資料を集めることになります。証券会社の窓口の説明がわかりずらいケースが多いように感じますし、有価証券の知識に乏しい相続人の方が資料について証券会社に連絡されても説明不足となり時間がかかるケースが多いです。こうしたケースでは依頼した税理士にお願いして説明不足の点を証券会社に代理で説明してもらうのが良いかと思います。

贈与財産の3年内加算について(相続税申告)

相続が発生した場合に、相続が発生した日からさかのぼって3年前の日から相続発生日までに贈与を受けた金額がある場合には、贈与を受けた財産の贈与時の価額を相続税の課税価額に加算します。よく贈与の3年内加算といわれるものになります。

相続税の申告をしておりますと、相続発生日で預金残高が少なければ財産が少なくなって相続税がかからなくできるように考える方もいらっしゃるようですが、例えば、相続人が相続発生日の1年前に被相続人の預金から500万円を引き出して消費してしまった場合は贈与税の対象になって更に相続税の課税価額に含めるということになる場合がございます。よって、相続発生前3年以内の贈与がなかったか確認することは申告するうえでとても重要なポイントになります。申告される場合は十分に注意れるとよいと思います。

国税庁 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

相続税 土地の評価について(路線価方式、倍率方式)

相続税の計算をするためには相続財産の評価をしなければなりません。この評価は一般的に相続税法財産評価基本通達等にそって行うことになります。

土地を評価する方法には路線価方式と倍率方式があります。路線価方式は国が発表している路線価をつかって評価をおこない、倍率方式は固定資産税評価額をつかって評価をおこないます。相続人の皆様は、どれくらい財産があるかご確認される際に固定資産税評価額の合計額で財産の総額のご検討をされることが多いようですが、路線価に土地がある場合、相続税法上の評価額は路線価をもとにおこないますので、固定資産税評価額より評価額が大きくなる場合が多いです。特に申告が必要か否かの検討をする場合は路線価地域に土地がある場合には慎重に評価する必要があると思います。

路線価による宅地の評価(国税庁)

倍率方式による土地の評価(国税庁)

相続税申告にあたり必要な資料②

相続税の申告にあたりまして主に必要な資料として金融機関の残高証明書がございます。これは被相続人名義で開設している金融機関口座の相続発生日の預金残高等の証明書になります。残高証明書の交付のご依頼の際に相続発生日でなく、証明書の交付ご依頼日で残高証明書の依頼をされてしまったというお話をたまに伺います。間違ってしまうとまた交付手続きをしなければなりませんので時間がかかってしまうことになります。この点はご注意されるとよいと思います。

また、定期預金などの場合、相続発生日の残高以外に経過利息を記載していただくこともできますので、交付をご依頼される際は摘要欄等に経過利息の記載をお願いするとよいと思います。

相続税申告にあたり必要な資料①

相続が発生した場合、相続人が何人いるのかということを確認することが重要な手続きになります。相続人の人数によって基礎控除額や保険の非課税枠等も決定いたしますので、相続税額の計算の重要な部分を決定する情報になります。

その確認のために必要な資料が戸籍謄本などです。具体的には、被相続人の戸籍謄本・原戸籍・除籍謄本、相続人の戸籍謄本・原戸籍などをお取りいただくことになります。相続放棄をされた相続人がいらっしゃる場合には、相続放棄の申述書が受理された証明書をお取りいただくことになります。

相続放棄の申述書について(裁判所)

相続税の申告期限と申告書の提出先

相続税の申告期限は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」ですので、例えば、1月6日に死亡した場合にはその年の11月6日が申告期限になります。この期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、これらの日の翌日が期限となります。
また相続税の申告書の提出先は、「被相続人の住所地を所轄する税務署」です。財産を取得した人の住所地を所轄する税務署ではありません。

参考資料 「相続税の申告と納税」国税庁